
サウダージ
1992年5月20日 中央公論社 1450円(税込) 201頁
[Data]
#1991年8月号〜92年3月号まで「マリ・クレール」(中央公論社)に連載(写真・小瀧達郎)
#1992年5月、中央公論社より刊行
#1992年度 第5回三島由紀夫賞候補 《選評》 《選考委員》
#1992年度 「本の雑誌ベスト10」 5位
#1999年「本の雑誌」10月号 「90年代の小説ベスト100」 58位
#2004年9月、角川文庫より、12年ぶりに復刊
#装丁: 高橋雅之
(高橋さんには「金曜日にきみは行かない」「湾岸ラプソディ」「リセット」の装丁もお願いしました)
#装画: 沢田としき
#編集者: 安原顯(合掌)
サウダージ(文庫版)
2004年9月25日 角川文庫 438円+税 203頁
[Data]
#1991年8月号〜92年3月号まで「マリ・クレール」(中央公論社)に連載」(写真・小瀧達郎)
#1992年5月、中央公論社より刊行
#1992年度 第5回三島由紀夫賞候補 《選評》 《選考委員》
#1992年度 「本の雑誌ベスト10」 5位
#1999年「本の雑誌」10月号 「90年代の小説ベスト100」 58位
#2004年9月25日、角川文庫より、12年ぶりに復刊
#2005年4月25日、2刷発行。 6月15日、3刷発行。 12月25日、4刷発行。
#解説: 北上次郎
#装丁: 高柳雅人(角川文庫装丁室)
#カバー写真: MIZUSHIMA TAKASHI
#編集者: 佐藤秀樹
[電子書籍版]
#2005年4月8日、“角川e文庫”より発売
#2005年4月15日、携帯読書サイト “どこでも読書” より発売
#2005年4月15日、“PDA book”より発売
[書評・その他]
◎「WEB本の雑誌」 2004年11月の文庫ランキング
◎角川文庫キャンペーン「『サウダージ』クイズ」 全問正解率は54%でした
◎Wikipedia−サウダージ (ポルトガル語およびガリシア語の語彙、および同名作品)
[立ち読みコーナー]
◎BOOKSルーエのHPで 冒頭部分を読めます
◎Amazonなか見! 検索 「目次」と冒頭部分を読めます
■初刷の帯 クリックで拡大
■角川書店 POP
特別再録[文庫版あとがき]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この小説はタイトルが先にあった。
SAUDADE
ブラジル人の会話で日常的に使われる言葉だが、これに正確に対応する言語は英語にも日本語にもない。日本では「孤愁」「追慕」「思慕感覚」などと訳されているが、ヒトの感情を表わす言葉を、モノを指し示す言葉のように翻訳することは不可能だ。
「失われたものを懐かしむ、さみしい、やるせない想い」
こんなふうに書くと、サウダージの意味に少しだけ近づいた気もする。
アフリカ大陸から南米大陸へと奴隷として連行された人々が大西洋の果ての故郷に思いを馳せる。何代にもわたる連行と入植と越境の歴史の中で、ブラジル人の心に刻みこまれた感情をポルトガル語ではSAUDADE≠ニいう一言で表わし、ブラジル音楽の歌詞でもしばしばキーワードのように使われている。
この小説は一九九一年から九二年にかけて月刊誌「マリ・クレール」に連載したものだが、執筆時に決まってくりかえし聴いていたCDがある。ニック・ケイヴのアルバム「ザ・グッド・サン」(一九九〇年)だ。ヘロインのしつこい中毒から抜けだし、十年間暮らしたロンドンに決別したケイヴがSAUDADE≠ニいう言葉に導かれるようにして書いたものだと、ライナーノーツにある。そしてブラジルからもっとも遠い国ニッポンで暮らすぼくも、この言葉に導かれて小説を書いた。
これは一九九二年に刊行されたぼくのデビュー二作目の小説だ。拙著『夜の果てまで』が存外の好評を得たためその勢いを買って十二年ぶりに文庫に収められることになった。
『夜の果てまで』は札幌と東京を舞台にした一九九〇年三月から一年間にわたるラヴストーリーだが、本作は一九九〇年晩夏の東京を舞台に描いた八日間のドラマだ。
一九九〇年──。日本では翌年のバブル経済崩壊を誰も予想せず、ちびまる子ちゃんの「おどるホンポコリン」が大ヒットしていたが、海外では東西ドイツが統一を果たし、翌年のソビエト連邦崩壊に拍車をかけた。そんな時代を背景にぼくは二つの小説を書いた。
一年、そして八日間。物語も時間の長さもまったく違うが、書きたかったことは、同じだ。サウージ・サウダージ。
二〇〇四年晩夏
盛田隆二
|