ラスト・ワルツ
1993年3月20日 新潮社 1500円(税込) 209頁
[Data]
#「新潮」1992年7月号に一挙掲載
#「群像」1992年8月号 「創作合評200」(三枝和子・青野聰・スガ秀実)にて合評 (「薬指の標本」小川洋子、「居場所もなかった」笙野頼子、「ラスト・ワルツ」盛田隆二)
#装丁: 新潮社装丁室
#装画: 杉山邦
#編集者: 中瀬ゆかり(「新潮」編集部)、寺島哲也(出版部)
#現在、中瀬ゆかりさん(リンク先は動画)は 「新潮45」の編集長を経て 「週刊新潮」部長職編集委員に、寺島哲也さんは 「フォーサイト」の編集長を経て広告部長に就いています。当時はそれぞれ20代と30代の文芸編集者だったけれど、いやはや、光陰矢の如し。


 

ラスト・ワルツ(文庫版)
2005年3月25日 角川文庫 438円+税 209頁
  
[Data]
#「新潮」1992年7月号に一挙掲載
#1993年3月20日、新潮社 より刊行
#2005年3月25日、角川文庫より、12年ぶりに復刊
#2005年5月20日、2刷発行。 6月20日、3刷発行。7月20日、4刷発行。
#2006年1月15日、5刷発行。
#解説: 池上冬樹
#装丁: 高柳雅人 (角川書店装丁室)
#PHOTO: TOMONARI TSUJI/A.collection/amana
#編集者: 佐藤秀樹


[立ち読みコーナー]
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再録[文庫版あとがき]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 『夜の果てまで』『サウダージ』に続く恋愛小説三部作≠ニして、この小説を再び世に送り出せることは大変嬉しいが、この三部作を書いた順番と文庫化された順番が逆転していることを、読者の皆さんにはまずお伝えしたい。
 というのも、『ラスト・ワルツ』は、一九八五年に「早稲田文学」新人賞に入選した「夜よりも長い夢」と、続いて同誌に発表した「1973年の新宿と犬の首輪」の二編をベースに書き改め、一九九三年に新潮社より単行本として刊行された小説であり、ぼくにとっては事実上の処女作だからだ。
 処女作には、小説家の実体験に根ざした切実なモチーフが織り込まれている場合が多いが、本書もその例外ではない。小説の舞台は一九七三年と一九八五年。それぞれぼく自身が両親の反対を振り切って上京した年であり、自分の書いた小説がはじめて活字になった年である。
 一九八五年──。もう二十年前のことだ。人間の身体の細胞は日々死に続け、一方で再生し続けている。その結果、人間は約七年で丸ごと入れ替わるというから、ぼくはあれから三回入れ替わっていることになる。今回、文庫に収録されるにあたって、久しぶりに読み返してみたが、文章の稚拙ぶりにはやはり愕然とした。だが、若い頃にしか(三回入れ替わる前の自分にしか)書けない文章もあり、そのあたりを直してしまうと損なわれてしまうものが多分にあるので、加筆修正は最低限にとどめた。

 一九九三年刊行の単行本のあとがきに、次のような一節を書いた。
 小説を書くうえで、いままで自分に固く誓ってきたことがある。それはけっして「私」を出さないということだ。「私」を出したら必ず失敗すると思ったのだ。しかし、この小説は失敗してもいいと思った。いや、この小説では、ほんとうの失敗をしなければならないと思った。ぼくの失敗はメグの死に届いただろうか。

 『ラスト・ワルツ』は、やがてそれが一冊の本になることなど夢にも思わず、家族が寝静まった深夜、台所のテーブルでひっそりと書き続けた小説だ。自分自身をモデルにした小説は、いずれにしてもこれが最初で、最後になるだろう。

 二十年目の春に                                 盛田隆二