■『多文化と自文化』、立ち読みコーナー  2005 Oct 02 (Sun)  

■『多文化と自文化――国際コミュニケーションの時代』(森話社/2005.9.22刊行)に

小論文を寄稿しました。

 タイトルは「マンホール・チルドレンに励まされて――近代化するモンゴルと日本」

2004.10.29に東洋英和女学院大学で行った講義「異文化理解とコミュニケーション/

日本とモンゴルの場合」をもとに書き起こした、原稿用紙三十枚ほどの小論文です。

■講座の概要
http://www.toyoeiwa.ac.jp/syougai/tokubetu_2004_2.html

共著者の教授氏らの研究論文と比べて、これは個人的なモンゴル取材記にすぎず、

そのエッセイ風の文章も、一冊の中では、かなり浮いているような気もしますが、

このような学術書に参加するのは初めてのことなのでなかなか楽しい仕事でした。


■小論文の一部をここに再録します。

 一九九七年までモンゴル政府は、ストリート・チルドレンの存在を認めなかった。海外

から要人が訪れると、マンホールのふたを閉めて子どもたちをマンホールから追い払った。

「子どもの人権」が問題視され、海外援助が打ち切られることを恐れたのだろう。だが、

その年の十月にNGOと政府の会合が開かれ、実態を認めざるを得なくなった。

 ストリート・チルドレンはモンゴル全土で一万人から三万人と、実態把握の数字に大き

な開きがあると先に書いたが、それは次のような事情による。


(一)貧困家庭で暮らす子どもたち

 家計を助けるため、街路で新聞、煙草、ジュースなどの販売、靴磨き、物乞いなどをし

ている子どもたち。一、二日家に帰らないこともある。教科書の値段が上がって買えなく

なったり、衣料、食料の不足のために、学校をやめるケースも多い。


(二)家族と連絡をとりながら路上で暮らす子どもたち

 両親の離婚、父親のアルコール中毒、継父継母による虐待などにより、自ら路上で暮ら

しを選んだ子どもたち。一週間から一ヶ月ほど家に帰らず、自力で生活の糧を得ながら夜

はアパートの玄関、マンホールの中、駅などで過ごす。学校に通うことはほとんどない。


(三)家族から完全に見放された子どもたち

 いつも路上で暮らしている。失業してマンホールで暮らす大人たちに脅され、万引きや

売春などの犯罪に関わる子どもも多い。


 以上のように、路上で暮らす子どもたちの実態は多様である。モンゴル政府の児童委員

会や警察は(三)の子どもたちの保護に重点を置いているが、(一)(二)の子どもたちは

(三)の予備軍であり、実態把握の数字に大きな開きがあるのはこのためだ。

(以下略)