エッセイ再録 『フリースタイル』 VOL.8  2009 Jun 10 (Wed)  


 09年4月7日発行 『フリースタイル』 VOL.8
 【One, Two, Three! 】 コーナーに寄稿
 http://webfreestyle.com/freestylevol8.htm

……………………………………………………………………

 ■盛田隆二 FAVORITE THINGS■
 《 2008.11.15 〜 2009.2.15 》 発売&公開 ベスト3

……………………………………………………………………

【本】 「『石田徹也‐僕たちの自画像‐展』 展覧会カタログ」
    (求龍堂オンラインショッピング)
 http://www.kyuryudo.co.jp/shopdetail/006000000012

【映画】 「あぶあぶあの奇跡」
    (監督=船津一/製作・配給=アズマックス)
 http://www.azmax-pro.co.jp/abuabua.html

【CD】 浦沢直樹 「半世紀の男」
    (フライング・ダッコチャン・レコーズ)
 http://www.strange-ds.com/contents/cd/naoki_urasawa.html


 かつて自著の刊行にあたって、某ミリオンセラーにあやかろう

 と、 「泣きながら一気に書き上げました」 という帯案を編集者

 に提示したが、 「盛田さん、泣きながらパソコンに向かう中年

 作家というのも情けなくないですか?」と却下されてしまった。


 まあ、コピーは冗談だが、長編小説が佳境に入ると、実際ぼく

 は泣きながら書いている。 知らぬ間にしょっちゅう涙が頬を

 伝っているし、声を上げて嗚咽もする。 もちろん情けないと

 は思わない。 今回選んだベスト3もまた、 針が振り切れる

 寸前まで/それ以上、精神が高揚した爽快感がある。


 二〇〇五年、三十一歳で踏切事故死した石田徹也。 〈日常生

 活に潜む不安や現代社会への風刺を超現実的に描く〉 画家と

 して知られるが、 昨年末、 練馬区立美術館で催された 「石田

 徹也‐ 僕たちの自画像‐展」 は圧巻だった。 一枚の絵の前で

 ぼくは二時間立ち尽くした。


 「あぶあぶあの奇跡」 は、ダウン症や自閉症の人たちでつくる

 楽団を十一年かけて追ったドキュメンタリー映画。 メンバー全

 員が一年から三年かけて、 やっと一曲のオリジナル曲をマス

 ターする。 そんな気の遠くなるような日々の苦楽を、 カメラは

 ひたすら追い続ける。 ナレーションを一切入れない禁欲的な

 演出が秀逸。


 最後に、 和久井光司プロデュース作品 「半世紀の男」。 浦沢

 直樹が泣きながら曲作りをしたかどうかは分からないが、 一曲

 目の 「洪水の前」 は何度聴いても鳥肌が立つ。 猛烈にアコギ

 をかき鳴らしたくなる。