エッセイ再録 『フリースタイル』 VOL.11  2010 May 05 (Wed)  


 10年3月20日発行 『フリースタイル』 VOL.11
 【One, Two, Three! 】 コーナーに寄稿
 http://webfreestyle.com/freestyle-bn.htm

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 ■盛田隆二 FAVORITE THINGS■
 《 09.10.1 〜 10.1.31 》 発売&公開 ベスト3
  今回は【映画】と2冊の【本】を選びました

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【映画】 『アンヴィル!』
    (監督:サーシャ・ガバシ)
 http://www.uplink.co.jp/anvil/

【本】 『高慢と偏見とゾンビ』
    (ジェイン・オースティン&セス・グレアム=スミス/
     安原和見訳/二見文庫/1,000円)
 http://bit.ly/aumCLe

【本】 『恨み忘れじ』
    (松村比呂美/角川ホラー文庫/580円)
 http://bit.ly/awtmTd

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「父さん、絶対観たほうがいいって。元気出るよー」 と息子に勧めら

れた映画 『アンヴィル!』。

いやぁ観てよかった。 夢を諦めきれない 50代へヴィメタバンドの実

話。家族を養うため給食センターで働きながらバンドを続ける彼らは

デビューから30年で13枚アルバムを出したのに100人の客しか来な

い。

「今よりひどくなることはない。それが俺の考えだ」

「音楽は永遠に残る。借金もそうかもしれないけど」

など数々の名セリフが眩しくて、 元気が出るばかりか、マジで涙ぐ

み嗚咽の声さえ漏らしてしまった。

苦節14年を経てやっと1冊の小説がヒットし、なんとか物書きで食え

るようになった経験を持つ身ゆえの過剰反応かもしれないけれど、

疲れたお父さんのみならず、夢と挫折の途上にある若者必見の名

画です。

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次に傑作ホラーを2冊。 まずは18世紀末のオースティンの名作を

サンプリングしつつ、ゾンビホラーにアレンジしたマッシュアップ小説

『高慢と偏見とゾンビ』。なんか商売上手だなぁ、と初めは少々斜に

構えて読み始めたが、 その破天荒なウイットに引き込まれて一気

読み。原作を未読の方は、本書の後でも前でもどちらでもいいので

読むべし。目ウロコ確実。

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『恨み忘れじ』 は 〈執念〉 と 〈復讐〉 をモチーフにした、書き下ろし

心理ホラー短篇集。 日常の恐怖を扱う点では新井素子を、 奇妙な

味の小説というジャンルでは吉行淳之介を、 そして語りの迫力では

坂東眞砂子を想起させる、 と書けば、いくらなんでも褒めすぎと思

われるかもしれないが、松村比呂美はブレイク間近の注目株。

角川書店には単行本で出してほしかった!