コラム再録 『フリースタイル』 VOL.13  2010 Oct 17 (Sun)  


■2010年9月22日発行 『フリースタイル』 VOL.13
 【One, Two, Three! 】 コーナーに寄稿
 http://webfreestyle.com/freestyle-bn.htm#freestyle13

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 ■盛田隆二 FAVORITE THINGS■
 《 10.5.6 〜 10.8.5 》 発売&公開 ベスト3
  今回は【DVD】と2冊の【本】を選びました

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【DVD】 『エレック「唄の市」2009 LIVE at 九段会館大ホール』
    (オムニバス/ポニーキャニオン/5,000円)

【本】 『私は売られてきた』
    (パトリシア・マコーミック/代田亜香子訳/作品社/1,700
    円)

【本】 『私学的、あまりに私学的な』
    (渡部直己/ひつじ書房/2,300円)

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■70年代のフォーク少年少女を熱狂させた、あの伝説の「唄の市」

が35年ぶりに復活すると聞いて、当日は矢も盾もたまらず駆けつけ

た。観客を挑発し煽り立ててやまない泉谷しげる。甘く切ないボーカ

ルが凄みを増した加奈崎芳太郎。あいかわらず骨太のブルースを

歌い上げる生田敬太郎。独特な世界観に裏打ちされた歌唱で健在

ぶりを示した佐藤公彦。日本のフォーク史を辿るような一大イベント

だったが、それは同時に清志郎に捧げられた一夜でもあった。

合掌。


■さて本2冊。「シアトルの書店で、あどけない少女の写真に“Sold”

というタイトルの表紙を見た瞬間、胸がざわざわしました」と、『私は

売られてきた』の訳者あとがきにあるが、ネパールでは毎年1万2千

人近い少女が、家族らの手によって、あるいは誘拐されてインドの

売春宿に売られている。日常的に行なわれているこの人身売買は

半世紀にわたって放置され続け、被害者は30万人を超えるという。

 ストリート・チルドレンや児童買春の問題に、ぼくはかねて関心を

寄せてきたが、本書が告発と啓蒙を目的としたルポルタージュでは

なく、綿密な取材に基づく小説だからだろう。等身大の少女の姿に

深い衝撃を受けた。必読。


■2冊目は残念、紙数が足りないが、著者が早稲田大学の授業で

教えている積年の「ネタ」の数々を、学部生、ゼミ、大学院レベルな

ど段階ごとに収録。特に谷崎潤一郎をめぐる2つのチャプターは圧

巻。あまりに渡部直己的なアクロバチックな読みは目ウロコ必至!

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